ジャケの絵柄で分類の尋常でないサントラ専門店

 この棚(ギャラリー)のレコードには、値段がつけられていない。宮越さんはニヤリと笑う。「お客様と交渉して売ります。これいくらで買いますかと。私はLPのジャケットに芸術、もしくは絵画と同等の商品価値があると思っています。だから、その価値を本当にわかってくださる方に、買っていただきたいのです。まあ言ってみれば、ちょっと変わったレコード屋なんです」。ちょっとどころではないのが実に素敵だ。

「でもこれには欠点があるんです。分ける作業にかなりの労力が必要で時間もかかる。でも、面白いから地道にやってます。かなり革命的な棚作りだと思うんですけどね」。宮越さんは、高い声でケラケラと笑った。「ただ、この特殊性もあるから、ネットではあまり売りたくないんです。ここに来て、私と顔を合わせて話をしながら買ってほしいんです。『ネットで買うな』と言いたいですね」

1960年代、70年代の名画のサントラ、EP盤。マカロニウエスタン「拳銃のバラード」は8000円、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」は3万円だ

 ジャンルは多岐にわたるが、中にはセクシーなんてのもある。結構きわどい写真が大写しになったジャケットを見せながら、「今リリースするのは難しいんじゃないかな。でも昔は出していた。そんなところも古いレコードの面白いところです」とほほえんだ後、「おおらかな時代だったんですね」と言った。

 ARTS C SOUNDTRACKがそろえるレコードは、店名にあるように、映画のサウンドトラックがその多くを占める。「次に多いのがポール・モーリアなどに代表されるイージーリスニング。映画音楽とイージリスニングで7割ぐらいです」。加えて、ビートルズを中心にしたロックやジャズも多数取りそろえる。モノとしてはレコードをメインにレーザーディスク、VHSビデオ、カセットテープも豊富だ。「ただ、あくまでもうちは、映画音楽がメインと考えていただければと思います」

見ただけで、「ダダンダンダダン」と聞こえてきそうなジャケットの表紙。やっぱりジャケットは大事

 今、時代はレコードを求めていると宮越さんは言う。「CDからDVD、Blu-rayに変わって、音は良くなりました。でもデジタル音を再生して聴くと頭が痛くなる。レコードは違います。音が温かい。人間にとって生理的に良いものと悪いものって、確実にあると思うんですよね」。本当にいい音を知っている人たちがそのことに気づき始めたと宮越さんは頬を緩める。「欧米では、レコードの音の良さは常識になっています。そして、デジタルの音から音楽を聴き始めた人たちにとっては、レコードの音は新鮮みたいですね」

音楽や映画の書籍も充実。最近はパンフなども増えてきた