昭和の古家具が忠実に再生されて現代に降臨

 そこには米倉さんの古いものに対する愛情がある。「作った人がいて、それをいいと思って買った人がいます。私たちの手元に来るまでに、最低2人の人の思いがあります。家具ならば、それを使っていた人がプラスアルファでいる。彼らの思いを踏みにじらないためにも、元の形に限りなく近づけたいのです」

作った人や使った人の思いがたっぷりとしみ込んでいるからこそ、なるだけ元の形に戻したい、という気持ちで作業する

 家具は、基本的には短期間で手放すものではない。少なくとも数年、長ければ10年単位で誰かが使っていたものだ。当然、愛着がなかろうはずはない。「作る人も一生懸命ですし、私たちもそれに応える義務がある。少なくとも、店に並べているものは、自信を持ってお出ししているつもりですよ」

 この仕事には楽しさもあると米倉さんはほほえむ。「買い取った時には、だいたい汚れていますが、手を入れることで奇麗になっていく。その作業は、素直に楽しいところです」

「ここにきていただけるお客様は、買い物の上級者だと思いますよ。さまざまなものを見てきた人がたどり着く店だと自負してます」と米倉さん

 商うのは、家具という名の道具だとしても、それを使っていた人たちの思いは必ずしみ込んでいる。「買い取りを依頼するお客様も、いろんなパターンがあります。そんな値段じゃ売れないとか言われることもあります。そういう意味では人間のいいところも悪いところも見えますよね。使ってた人が亡くなって、それを処分する子供たちの表情はやはり寂しそうです。僕が買い取るのは、その人たちの思いも含めていると思っています。ただ、注意しなくちゃいけないのは、それらを気にしすぎると、値段の判断を間違うところです。仕事ってそういうものですよね」

店は寒川と鎌倉にある。鎌倉店は2002年オープン。今回取材したのは4年前にオープンした工房を併設する寒川店

 古家具は、量的に年々減ってきていると米倉さんはうつむく。「鎌倉でも古い家がどんどんなくなっていますから、18年前とは違ういます。だけど、もしかしたら、僕らが直した家具を誰かが買って、また壊れたら直して使える。使ってくれたらそれは楽しいことですよね」

 使う人のライフスタイルを鮮明に映し出すのが家具だ。どんな暮らしをしたいのか、どう生きたいのかまでも見えてしまうことさえある。だからこそ家具選びは楽しいし、こだわる価値がある。その選択肢の中に、古家具を取り入れてみるのもアリだと思う。

ふるかぐ ふるどうぐ そうすけ さむかわてん
神奈川県高座郡寒川町岡田4-6-32
📞0467-95-9812
営業時間:午前10時〜午後4時
定休日:月
http://www.so-suke.com/

文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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