古本が取り持つ素敵なえにし

 そんな粟生田さんが、古書店を開こうと思ったのは、いくつかの仕事を経験する間に、「勤め人には向いてない」ことがわかったからだ。「だったら自分でやるしかないと思ったときに、身近に感じたのが本でした」。縁は異なものである。自宅近くの図書館で、コミックや小説を読んでいた少女が、大人になって、また本に戻ってきたことになる。

 アダルト以外は、ほぼ全ジャンルを置く。コミックが多めなのは、図書館に行き始めた頃、漫画を読んでいたことと関係していると言えば強引だろうか? 全てはどこかで繋がっていると考えれば、それもまんざら的外れではないだろう。当の粟生田さんは、その理由に地域性を挙げた。「この地域自体に、コミックの需要があるのだろうって思っています。店を始めた当初から、売りに来る人も、買いに来る人もコミックが多い気がします」

「チキチキマシン猛レース」の登場人物ブラック魔王 の飼い犬ケンケン。魔王をバカにしていた。独特な 笑い方は、今も多くの人の記憶に刻まれている  

 サンカクヤマのもう一つのウリは、本以外のおもちゃや小物が相当数置いてあるところだ。「店を始めたときに、結構棚が空いていて、そこを埋めるために、私物の雑貨やおもちゃを並べたんです。すると、お客さんもおもちゃを売りに来るようになっちゃったんです」

 特に年代を限っているわけではないが、懐かしいおもちゃが多い。古書店にフラッと入る我々の意識は、宝探しに例えられることがよくある。その意味では、何か面白い書物を求めてさまよいながら、結果、古いおもちゃに出合えたというのも、それはそれで楽しいことに変わりはない。

レトロイズムのトップページにあるイメージの招き猫を見つけ、思わず写真を撮ってもらった

 店内の棚は、ジャンルごとにきちんと整理され、美しく並べられている。面出しが多いのも特徴である。「汚れが目立つものは、店に出さないように、なるべくきれいなものを並べるようにしています」

外観はいたって普通の古書店に見えるが、中に入ると様子は一変。フィギュアや紙芝居などのおもちゃが所狭しと並んでいる 

 女性ならではの、きめ細やかさな心遣いがあふれる店内は、古本とおもちゃが紡ぐ人と人、人とモノ、モノとモノの縁(えにし)を確かに感じさせてくれるのだ。

こしょ さんかくやま
東京都杉並区高円寺北3-44-24
📞03・5364・9892
営業時間:正午〜午後9時
定休日:水

文・今村博幸 撮影・岡本央

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