良書を過去から未来へ橋渡し 下北の知の案内人

 30代の終わりに独立、開店したのがこのクラリスブックスだ。棚に並ぶのは、オールジャンルの古書である。「古本屋は立地や店主の個性がにじみ出ちゃうんです。私は大学での専攻が哲学だったので、哲学関係も比較的多い。さらに下北沢という場所柄、演劇や音楽関係の人、デザイン事務所があったり、フリーの編集者やライターさんも結構いらっしゃいます。彼らが求める本や、逆に売ってくれる本などが、必然的に多くなってしまうことも事実です。でもそれが面白いと考えています」

 棚の作り方には特にこだわりがないと高松さんは店内に目をやる。「古本屋こだわりは、グチャグチャしている方が楽しいと思っています。それが、古本屋のあるべき姿じゃないかって。あともう一つは、私自身がいいかげんな性格なので、かっちりとジャンルで分けるとか、やりたくてもできないんです」と苦笑いする高松さんが、古本と古書店の楽しさを語った。

懐かしいモノをテーマにした本がまとまって入ったので作った棚。「特集の棚を作ってみたいと思ってました」と高松さん

  「古本という名前通り、古きを知ることができるのが最大の楽しさだと考えています。そして本は、ハードとソフトがきちんと合体している非常に優れた媒体だとも思っています。適当な場所に100年間に置いていあっても、100年後にはちゃんと読める。電子ブックだと見られない可能性が十分にあります。たかだかここ数十年の間に、VHSのビデオを見ることが困難になったのと同じようにね」。この先、技術が進歩すれば、本以上のすごい媒体が発明されるかもしれない。「しかし」、と高松さんは言う。「できたとしても、500年後か1000年後じゃないですかね」

野球本と「マザー・グース」と「ふしぎの国のアリス」の絵本が隣に並ぶのは、古本屋というよりもクラリスの真骨頂だ

 かけがえのない本を過去から現在の人たちへと渡すのが古書店の存在意義であり役割だ。「新刊本を売る店は、今現在出版された本を売るのが役割です。もちろんその意義は大きい。でも、古本屋は、150年ぐらい前に出された本も扱えます。売る側の気持ち一つで、なんでも自由に置けるのが古本屋の良さです。昔を知ることは歴史を学ぶことと同意だと思いますが、古い本には次の世代に繋いいいくための知恵が詰まっています」

 そんな本を選び出し、時には探し、現代に生きる人たちに提示していく作業は楽しく、意味のあることだと高松さんは言う。「お客様からすれば、そんな情報を発見できる楽しさが古本屋にはあると思います。現実的な問題として、欲しかった本が安く手に入ると言うこともありますが、それ自体、気分のいいことでもありますから」

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