珠玉のヴィンテージカーに出会える専門店

 「彼らが通っているレストランに入ったら、初めて見る料理は珍しく、食べれば、それまで口にしたことのない味がいっぱいあるんだから。これは横浜に住まなきゃって確信しました」。芳野さんが20歳ぐらいの頃、50年ほど前の話である。「本牧のジャズバーで、ショットでバーボンを飲んでる外国人の後ろ姿は、惚れ惚れするほど格好良かった。(老舗バー)スターダストも好きでよく通ったものです」

2000GTの純正マグネシウムホイール。貴重な部品やパーツをそろえているのも、Vintage Car Yoshinoの強みだ

 そんな横浜で会社を設立して店を出したのは、芳野さんが33歳の時だった。扱うのは主に、1960年代以前に生産された国内外のヴィンテージカーである。「1960年代以前」というのには、大きな意味がある。芳野さんがたばこを片手に説明を始めた。「今のインジェクションとは違って、60年代以前はキャブ(キャブレター)仕様車なんですよ。キャブ仕様車が私は好きなんです」

 中でも芳野さんが愛してやまないのが、トヨタの名車「2000GT」である。「私が最初に2000GTの新車を買ったのは、トヨタにいる時でした。給料が2万円ほどでしたが、230万円ぐらいした。これは絶対に手に入れなきゃダメだって信じていたからです。親からなんとか借金してね」。まずは、その足回り系に惚れたと芳野さんは言う。「トヨタが当時の最新・最高の技術をこれでもかと用いて、手間暇かけて完成した。ボディーもハンドメイドでしたから」

ダイハツの三輪自動車ミゼットMP5型。一昔前の酒屋
などの店先を写した写真には、必ずミゼットがあった

 当時の高級車の共通項として、材質の良さがあったが、2000GTも、もちろん同じだった。頑丈な鉄を使って作られていたのだ。その分、車体の重量もしっかりあったが、それによってもたらされる比類なき重厚感が、車全体から湧き上がっているようだった。

 さらに、2000GTは、マニアをうならせる魅力をふんだんに身にまとっていた。「まずは排気音だね。キャブレターの腹に響くような音がたまらないんだ」。当然のようにマニュアル車だが、個体によって癖が強く、トランスミッションのギアが入りやすいのとそうでないものがあった。そこが男心をくすぐった。

通称ハコスカ2000GTのインパネ(インストロメントパネル)。絶妙に配置され視認性も十分に確保された計器類