レトロイズム記者が独楽専門店主とベーゴマ対決

 突然、ひさ子さんから、「ちょと勝負してみますか」と提案され、奥から建具職人のご主人の吉治さんを呼んでくれた。実を言うと筆者の小学校低学年の頃の遊びは、ベーゴマが中心だった。だから、多少の自信はあったが、何しろ何十年ぶりと言うブランクがある。吉治さんは、「覚えてる?」と言って、ニヤリと笑い、「大丈夫だよ。すぐに思い出すよ」と慰めてくれた。

極小の独楽。もちろん回すことが可能。ひょうたんのケースに入っている

 程なくして、吉治さん、ひさ子さん、筆者の3人の勝負が始まった。顔つきは、誰もが勝負師だ。シートを張った台の上に、3つのベーゴマが放たれた。手に汗握る攻防が繰り広げられたが、勝ったの吉治さんの独楽だった。「悔しいなー」と思わず叫ぶ筆者であった。が、何回か対戦が行われている間は、いい歳をして、すべてのこと忘れた。気がつくと、空が赤く染まっていた。子供の頃と同じ風景を見た気がした。

元々は建具店。店のほとんどのスペースは「独楽の店 こばやし」のために使われている
 独楽には、ひもを使うものと手で直接回すものの、大きく分けて2種類がある。しかし、いずれも、回せるようになるには練習が必要だ。できなくて諦めたらそこで終わる。面倒なことはなんでも、機械やコンピュータがやってくれる今のご時世、我々は「労力を使ってできるようになる喜び」を忘れてはいまいか? 

 童心に帰り、そんなことを思い出させてくれたのが、小さな1個の独楽だった。

こまのみせ こばやし
東京都渋谷区広尾1-15-1
📞03・3441・7772
営業時間:午前8時〜午後8時
定休日:日
文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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