コンパクトカメラから学ぶ写真を撮る楽しさ

  コンパクトカメラを主に扱うのには、理由がある。店主でスチールカメラマンでもあり、仕事でビデオも回している児玉浩宜(ひろのり)さんは、自信に満ちた表情で話し始めた。「カメラを始めようとする人たちの多くが、最初に一眼レフを買うんです。でも、重たいので持ち歩かなくなって、2台目はコンパクトカメラを買うんですよ。または、一眼レフを買っても難しくて写真をあきらめちゃう人も少なくないんです。だったら、最初にコンパクトカメラから始めたらどうですかというのが僕の提案です」

売られているのは、フィルム一眼レフカメラがほんの少し、あとは全てフィルムコンパクトカメラだ   しかも、児玉さんが薦めるのは、全自動のコンパクトカメラだ。「大切なのは、常に持っていられるということです。いいタイミングでカメラがなかったら写真を撮れませんからね。そういう意味でも常にカバンに気楽に入れておけるような小さいくて、気軽に撮れる方がいいと思うんです。一眼レフで構えても、そうそういい写真が撮れるわけでもありませんからね」。常に手元にあることこそが、特にメーカーなどにこだわりがないという児玉さんのこだわりなのだ。

 「記念日とかイベントごとに、写真を撮るのは過去のもの。今の若い子たちは、日常を撮る人がすごく多くなってると思います。花火大会なんかは、撮る機会が以前に比べて減っているんじゃないですかね」。つまり、児玉さんの想(おも)いは確実に伝わっているのである。

写真関連の書籍も販売。あの「アメリカ人」で名を上げた現代の巨匠ロバート・フランクの写真集も見える

 「重要なのは写真でありカメラではない」と児玉さんは繰り返す。だが、児玉さんの接客ぶりを見ていると、カメラが好きなのがバレバレだ。初心者らしき客が来ると、フィルムの入れ方から扱い方まで、懇切丁寧に指導してから商品を売るのである。「カメラを持つきっかけを作っているつもりです。だから、お客さんがどれくらい知ってるかを見極めて、知らないようならちゃんと説明します。写ルンですしか使ったことない人も多いですから。買っていただいた以上、ちゃんと使ってもらいたいですからね」  

店主の児玉浩宣さん。自らも写真展を開くカメラマンだ。発表する写真には、いろんなカメラを使う。「個性がわかっているので、状況に合わせて使い分けます」  
 デジタルカメラは新しい商品が次々と発売されるので、価値がすぐに下がってしまうと、児玉さんは言う。しかし、コンパクトカメラは違う。
「コンパクトカメラには、価値がちゃんと残っているんです。第一に、フィルムという魅力的なメディアがあります。デジタルでどれだけ近づけても、フィルムが持つ、粒子感とか質感には敵わない。また、日付表示を見ると、想定年数をはるかに超えて、2000年代の日付がないなどという面白みもあります。それでもちゃんと使えるところに凄さを感じます。だからこそ、コンパクトカメラを残したいんです」。電子機器が入っているフィルムカメラは修理が難しい。だから、大切に使ってほしいと、児玉さんは強調する。「出来るだけ長く使っていれば、思い入れのあるカメラになりますしね」

トイカメラは、小学生ぐらいの子が自由研究で、
フィルムカメラを題材に取り上げたいと買ってい
 く場合もあります」。女子高生にも可愛いと人気だ
 

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