だからこそ、時計を止まったままにしておくわけにはいかなかったし、ましてや捨てる気はさらさらなかった。オープン当初の雰囲気を取り戻したいという気持ちも大きかった。新規オープンの祝儀も少なからずあったので、それを使おうと思った。「ソコソコ出費は覚悟してたんですが、別のところで聞いたら、1万5000円と言われたので、間髪入れずに、ぜひお願いしますと言ってました」。時計が幸運を運んできたのかもしれない。
ニッカのランプからはほのかな明かり。父親の思い出とともに仕舞われ、捨てられずにその居場所を探していた客が、店に持ち込んだ
本来、バーは時計がないのが常道だ。それは、時間を気にしないでゆっくり飲んでほしいというバーテンダーの気遣いでもある。しかし敢(あ)えて時計を壁にかける。カウンター席に座ると、客の背中の先に時計があるので、気にならないだろうと服部さんは思っている。「僕からは見えますけど、お客さんに時間を知らせるためのものではありません。あくまで象徴として、そこにあるんです」。店内が静かな時には、カチカチと小気味良い音がBGMとしても機能する。薄暗い店の中で、カウンター、テーブル、椅子、壁、そして時計も塗り込められたように存在するのは、時を経ることでしかなし得ないことだ。
ホテルニューグランドで生まれた高級なナポリタ
ンは、野毛の洋食屋で庶民の食べ物へ。両地域の
中間にある馬車道で新たに再生した裏メニューだ
コメント
柱時計の向かいの壁にはイングリットバーグマンもいるしね😁
レトロイズム(retroism visition old,learn new)へのアクセス、ありがとうございます。
そういえば、往年の大女優イングリッド・バーグマンも、
M’s Barの壁に溶け込む「華」の一つですよね。
店のセンスの良さを感じさせてくれます。
マスターのビールは世界一美味しいです。
レトロイズム retroism visiting old, learn new にアクセスありがとうございます。
こちらのビールはサッポロの生ですが、他で飲むサッポロ生とは、
確実に違う味で飲ませてくれます。つまり世界で一番という言い方は、
決して間違いではないかもしれません。