古いシトロエンが教えてくれる新しいカーライフ

  最大の魅力は、何と言っても乗り味だ。それを生み出しているのは、サスペンションからブレーキ、ギアチェンジやパワーステアリングもすべて油圧で行っている独自のシステム。これは他の車には全く見られないシトロエンだけが持つ大きな特徴だ。「エアサスペンションと似てるっていう人もいるけど、僕は違うと思う」。窒素ガスと油の上に車が乗っかっているという不思議、としか言いようがない。

 「人間でいうと、お母さんのお腹の中にいるときの、羊水に包まれている赤ん坊に近い感覚だと言われています」。まさに、生き物そのものではないか。「ハイドロニューマチックという方式は、最近まで使われていたのですが、実は最近やめちゃったんです。本当に残念でなりません」。だからこそ、古い車を直して客に提供する。少なくとも、竹村さんにとって、シトロエンは車メーカーに元気があって、個性があった頃の象徴でもある。「今後も同じです。昔のシトロエンは味が濃い。そんな古いシトロエンを直して、本当に好きな人たちに乗ってもらう。その手助けを続けていきますよ」。竹村さんの目が輝いていた。

DS用の整備解説書。英語とフランス語で表記されている。50年前の貴重品。これがあれば、古い車も必ず修理が可能だ

 「若い人たちにも乗ってもらいたいですね。車はその人のライフスタイルそのものだと思うんです。また車は伴侶でもあります。普段使いしてほしい。だから、独自に排ガス規制をして、エアコンをつけて快適にしたクラシックカーを売っています。最近エコが騒がれていますが、何が一番エコかって、一つの車に長く乗るのがエコだと思いますよ」。車に携わる者として、その存在がもつ負の部分も忘れていない。それこそが竹村さんならではの愛情表現なのかもしれない。

 三角の土地に店がある。シトロエンのエンブレムに似た形なのは偶然か

 竹村さんによって新しい命を吹き込まれた古いシトロエンは、令和の時代も生き続けている。

じゃべる
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文・今村博幸 撮影・柳田隆司