レコード文化よ永遠なれ 次世代へつなぐ懸け橋に

 「かつて、シンガー・ソング・ライターでベーシストの寺岡呼人さんがテレビの番組で、ビートルズの『プリーズ・プリーズ・ミー』をCDと完全UKオリジナル盤レコードの聴き比べをしたんです。テレビを通しても、音の厚みや温かさがまるで違うのがわかりましたよ」。当時の音を思い出すようにうっとりした表情で南さんが言う。

レコードに帯がついているのと無いのでは、値段がまるで違う。モノに対する日本人の麗しきこだわりである

 「さらにレコードには集める楽しさもあります。本棚に読み終わった本が並んでいく喜びに近いものがあると思うんです。こんなふうに保管してますっていう主張が棚から見えるのも面白いですよね」。レコードの良さについて大島さんが付け加えた。「『わざわざ』ってのが良いんです。ジャケットが並んでいる棚に行って、その日の気分でちょっと迷いながら一枚を選び、ジャケットからレコードを出して、ターンテーブルに乗せる。これだけでもかなりの手間ですが、『わざわざ』それをするのって、今の時代、ぜいたくな時間と言えると思うのです」

新入荷のLPをスタッフが心を込めて棚に収めていく。その想(おも)いが客に伝わっていく

 さまざまなタイプの店を継続して展開しているディスクユニオンから、レコードが消えたことは一度もない。振り返ってみれば、CDがこの世に出たのが1980年代前半。音楽ファンがレコードへと戻り始めたのが、10年ちょっと前と言われているので、レコードの良さが見直されるまで、あっという間とも言える。そんな中、満を持して2018年にオープンしたのが、ユニオンレコード新宿なのである。

シングル盤が並ぶ棚。何の気なしに引き出すと、「あった!」と思わず声を上げてしまう一枚に出合うこともしばしばだ

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする