レコード文化よ永遠なれ 次世代へつなぐ懸け橋に

ユニオンレコード新宿(東京・新宿)

retroism〜article111〜

 フロア全体がレコードだけで埋め尽くされた様は壮観だ。どの棚にも310ミリ×310ミリ(場合によっては、315ミリ×315ミリ)のLPと180ミリ×180ミリ規格のシングル盤のみが整列している。かつての「レコード屋」では当たり前の風景だ。

名機JBL4344はシングル盤の棚の上。流れてくるのは、家庭のオーディオ機器でなかなか聴けない躍動感みなぎる音を奏でる

 さらにオーディオ好きを喜ばせるのは、壁上部に取り付けられたJBL4344から朗々と流れるハツラツとした音である。もともと近くにあったジャズ館に設置されていたものだ。「ユニオンレコード新宿」店長の大島靖広さんが説明を始めた。「せっかくだから目立つところにおきたいよねという話になって、ちょうど窓のあった場所に寸法がピッタリと合ったので、そこに設置することにしました。見た目のインパクトもあると思いますよ」。BGMは普段、このスピーカーから流れている。「お買いいただく前の視聴には、レジカウンターにおいていあるプレーヤーでヘットフォンを使っていただきますが、JBLで聴かせてほしいと希望される方も多いんですよ」。レコード通なら空気を通した音で聴きたいと思うのはごく自然な欲求だろう。「ディスクユニオン」は、日本で生まれたレコード店の草分け的存在である。その前身が、1941(昭和16)年に創業したユニオン商会という名の中古専門小売店だったことはあまり知られていない。つまり戦前からの店なのである。60年代前半に中古ラジオやオーディオを売るようになり、レコードは店の一角でひっそりと売られていたという。「実際にレコード中心になったのは、67(昭和42)年ごろからだったそうです。輸入版のレコードを売り始めました」

分類されたインデックスプレートの中から、お気に入りのアルバムを掘り出した時の喜びは大きい

 80年代になると、時代の流れの中でCDを売るのは、当然の成り行きとなった。しかし、ディスクユニオンは、レコードを見捨てなかった。棚に並ぶ割合は、CDが多くなったとはいえ、かたくなにレコードを世に送り続けた。「レコード店である」というプライドだったに違いない。「私どもは、何十年も前からレコードを売っていた会社なんです」。チーフである南敬介さんが、いみじくも力を込めて言った。デジタルの音楽がいかに一般に広がっていこうとも、アナログ音源の良さは全く変わらなかったからだ。

最近新しく出した冊子「音盤同盟」。もちろん無料だ

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