オレンジ色の列車が運ぶ「淡い恋と旅の思い出」

 ミュージアム名にはロマンスカーを前面に出しているが、本質的には小田急電鉄の歴史をたどった博物館という性格も備えている。「小田急線は、当時は田畑が広がっていた土地を通って、新宿という大都会から海のある観光地である片瀬江ノ島や小田原まで結んでいます。途中には、成城学園や経堂などの高級住宅街があったり、沿線には山もありさまざまな顔が見られます。それぞれの街の特性に応じてにぎわいを創出していくことが、社是でもあるのです」

ジオラマを走る精巧に作られた街と江ノ電。我々人間にとって街とはなにかを、改めて教えられる

 館内には、小田急電鉄が取り組んできた複々線化事業の解説のほか、新宿から箱根までが見渡せる精緻なジオラマも見応え十分だ。小田急線沿線の一日の移り変わりをプロジェクションマッピングなどを駆使して紹介している。また、実際の運転席を使ったシミュレーターや観客を参加させる「インタラクティブアート」で感覚的に街づくりを体験したり、紙でできた小さな町に、自分で作ったペーパークラフトの電車を走らせることで、街づくりとかデザインを子どもたちに伝えるなど、子どものためのスペースも充実する。「街ができて、にぎわっていく様子を子どもたちに体験してもらいたいのです。それは同時に、小田急電鉄が取り組んできた、線路を引いて暮らしや旅を楽しんでほしいという、私どもの基本的な思想でもあるのです」。そして神林さんは言った。「勢ぞろいした歴代のロマンスカーを、家族や友人どうしで、あーだこうだと言いながら見ていただいたり、『昔お父さんこれ乗ったんだよ』っていう、会話を楽しんでもらえれば。気軽に遊びに来られる公園みたいな存在になれたらいいなと思っています」

「訓練で一番最初に乗ったのがこれ。すべてのロマンスカーを運転しました。こういう形でまた関われるのは、うれしいことです」と、館長の高橋孝夫さん

 ここは正に、「本物」に触れることができるミュージアムだ。その証拠に、展示されたロマンスカーの車内に入ると、昔のままの列車の匂いが残っている。それとともに蘇るのは、楽しい思い出の数々である。

ろまんすかーみゅーじあむ
神奈川県海老名市めぐみ町1-3
📞043-233-4110
開館時間:午前10時〜午後6時
休館日:第2,第4火曜日
入館料:大人(中学生以上)900円、子ども(小学生)400円、幼児(3歳以上)100円
団体は大人(中学生以上)800円、子供(小学生)300円、幼児(3歳以上)50円
文・今村博幸 撮影・JUN

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