路地裏を歩く其の捌

 

佐竹商店街、おかず横丁(東京・新御徒町)

retroism〜article80〜

2000年、幸福の守り神であるフクロウを佐
竹商店街のシンボルマークとして採用した

中華料理店らしい食欲を誘う香りが外にこぼれて
くる。ついつい寄ってしまいたくなる店構えだ 

江戸風鈴の工房が入り口からすぐのところに。クーラーが普及する前、風鈴は涼しさを部屋に運ぶ必需品だった

なぜか女性服を売る店が多い。330mの間に数えてみると9軒もあった。女性に優しい町なのかもしれない

下りていたせんべい屋さんのシャッターには、か
っぱのような絵と、火の用心の文字が郷愁を誘う

自家製カステラの店。年季の入ったショーケースが、並
んだカステラやロールケーキを美味しそうに見せている

靴屋の店先の隅の方に見つけたベランダサンダル。爪先があ
いているのとそうでないもの、2種類を用意するきめ細かさ

ガチャガチャは、すっかり現代風へと様変わりしていた

古い床屋さんは、昭和な商店街の路地裏にこそ似合う

木で作られた物干し台は、いい感じで朽ち始めていていた

おかず横丁とはなんともストレートだが食欲をそそられる名ネーミングだ

横丁に入ってすぐのところには、看板建築の美容室があった。しまっている模様

こちらも看板建築が見事な茶舗。

おかず横丁の路地裏に残る缶を作って
いるらしい小さな工場。いまだ現役だ

この辺りの町名は鳥越。「パーマ」の文字が
ちょっとデザインしてあるのが微笑ましい

昭和初期からここで店をはる煮豆と佃
煮の老舗。米の飯が無性に食べたくな

焼き魚のいい香りの元がここ魚米(うおよね)。おかず横丁の顔といっていいだろう

通り沿いには、赤い提灯がずらりと並びアピールす
るが、逆に街の静けさを増幅させているようで残念

黒々した木製の看板は、店の歴史をありありと物語る

あとがき

 ベランダにはサッと履けるサンダルがあると便利だ。ただし、屋外なので雨を想定した素材でなければならない。最適なのはビニール製だろう。おそらく、そんな考えから生まれた「ベランダサンダル」の「懐かし版」が店頭にひっそりと置かれていた。佐竹商店街を新御徒町側から入ってすぐの靴屋だ。

 ここは、「日本で2番目に古い商店街」である。ちなみに、一番は金沢の片町商店街だ。その歴史は、江戸時代に遡る。千代田区神田にあった秋田・久保田藩主・佐竹右京太夫の江戸屋敷が名前の原点だ。八百屋お七の放火による江戸の大火で焼失後、1683(天和3)年に現在の台東区に移転したのが場所の理由。「佐竹の商店街」が繁栄を始めるのは明治になってからだった。関東大震災や第二次世界大戦など紆余(うよ)曲折を経て、戦後1946(昭和21)年に、佐竹商店街組合が結成されて発展し、都内屈指の商店街となった。当時は特売も盛んで「ゲバゲバモーレツセール」という、ド昭和な名前のタイムセールがあったらしい。近隣の風呂屋の女風呂が空になったと言われるほどの盛況だった。

 そして現在、残念ながら閉めてしまった店が少なからず存在する。地下鉄・大江戸線・新御徒町側の入り口から少し東にあるにぎやかな御徒町と比べると、さらに寂しさが増幅されてしまう。しかし、風鈴を昔ながらの製法で作り続ける工房に象徴されるような懐かしさが十分に残り、頑張っているのは間違いなく、無条件で喝采を送りたい。さらにカステラの専門店や思わず引き込まれてしまいそうな町中華があったりなどと、昔の風情はどっこい生き続けていた。

 佐竹商店街の清洲橋通り側の入り口からすぐのところにあるのが「おかず横丁」だ。その名の通り、毎日の食卓にぴったりなおかずを売る店が並んでいる……はずだった。が、残念なことに、こちらも閉まっている店の方が多い。しかし、入ってすぐの魚屋からは、店で焼いた魚の芳醇(ほうじゅん)な香りが漂う。歩いているとどこからか「ビューティフル・サンデー」が聞こえてきた。やがて歌は郷ひろみの「男の子女の子」に変わる。横丁を盛り上げるにはうってつけの曲で、どこか救われたような気持ちになった。

 路地に入れば、缶を作る小さな工場や「パーマ」の看板が琴線をくすぐる美容室などが子供の頃の記憶を蘇らせる。そういえば、昔は美容室などとは呼ばなかったし、ましてやヘアーサロンなどという呼び名もなかった。「パーマ屋さん」が正解だったのだ。

 シャッター商店街という言葉を聞くようになって久しい。それでも、古い商店街には歴史を重ねた底力がいまも息づいていた。良いものは必ず残る。実際、二つの商店街にも、新しい店がチラホラと出現しはじめていると聞く。そんな力に引っ張られ、昔ながらの店も元気を取り戻す時が、いつか必ず訪れると信じたい。そうなったとき、「古き良きもの」は、さらなる輝きを放つことになる。

文・今村博幸 撮影・SHIN

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