銀塩を追求し続ける作家の耽美な世界に息をのむ

ファインプリント展(東京・一番町)

retroism〜article78〜

 あらゆるモノが時代とともに変わっていく。その幅はさまざまだが、写真・カメラ技術においては文字通り劇的だった。

 フランスでダゲレオタイプ(銀板写真)が特許を取り、カメラが市場に出回ってから約180年がたった。そしてデジタルカメラの嚆矢(こうし)・カシオQV10が25年前に発売。今カメラを取り巻く状況はすっかり様変わりした。しかし、銀塩(ゼラチンシルバー)写真が歴史の大半を担ってきたのは紛れもない事実である。

広川泰士作「Study works for timescapes」、撮影1988年、プリント2001年。巨大で奇妙な形の岩に惹(ひ)かれ、世界の砂漠地帯に赴いて撮影された一枚

 その銀塩写真を追求し続けている写真家たちの作品を集めた「ゼラチンシルバーセッション参加作家によるファインプリント展」が東京都千代田区一番町にあるJCIIフォトサロンで、9月29日から11月1日まで開かれる。

「ゼラチンシルバーセッション」は、講談社出版文化賞やニューヨークADC賞をはじめ多くの受賞歴がある広川泰士氏、広告写真から映画やコマーシャルフィルムまで幅広く活躍する瀧本幹也氏を中心に4人の写真家が2006年に発足させたプロジェクトである。

中藤毅彦作「Winterlicht」、撮影2001年、プリント05年。現在は生産されていないハンガリーフォルテ社製のバライタ紙を印画紙に使用したビンテージプリント。「僕のベストプリント」と中藤氏

 彼らの行動は極めてプリミティブ(原始的)だ。フィルムを使用して撮影し、地道な暗室作業から作品を生み出す。さらに、その楽しさを伝え、フィルムや印画紙など銀塩カメラにとって不可欠な感材の生産を守る活動も行う。展覧会やワークショップなどの活動は19年には10回を重ね、賛同写真家は50人を超えた。

 今回の展覧会では、ゼラチンシルバーセッション参加作家9人の作品を展示。全てモノクロのファインプリント47点が並ぶ。全てが、表現としての写真を追求するためにネガフィルムを使用し自ら印画したオリジナルプリント。今回の展覧会のために撮り下ろした作品もある。風景や人物、太陽や波の揺らぎなど幅広い対象に彼らのレンズは向けられた。銀の粒子でしか表現し得ない豊かな諧調による世界観の深さに、思わず息をのむ。モノクロ写真表現の多彩さにも驚かされることだろう。

若木信吾作「うしろすがたを」、撮影1999年、プリント2020年。今でも夢に出るという16年前に亡くなった氏の祖父。その人物像を探り続けた一枚だ

 開館は午前10時〜午後5時、毎週月曜日は休館。入場無料。問い合わせは同館(03・3261・0300)

【レトロイズム編集部】

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