ぬくもりと希望の空間 銭湯の魅力に迫る特別展

ぬくもりと希望の空間〜大銭湯展(東京・小金井)

retroism〜article76〜

 日本という国が内包する歴史や風俗、文化のみならず、絵画、建築、付随する産業まで、銭湯には多岐にわたる「意義」が存在している。それらを時間軸に沿って体系的に見られるれる特別展「ぬくもりと希望の空間〜大銭湯展」が「江戸東京たてもの園」(東京都小平市)で開催されている。

子宝湯浴室。浴槽の向こうに描かれたペンキ絵、洗い場のカランなど、昭和の銭湯の原型がある=写真はいずれも江戸東京たてもの園提供

 会場は四つの章に分けられている。まず第1章は「江戸東京の入浴事情」だ。憩いの場として、また情報交換の場としての銭湯の始まりを紹介。それが、今も変わっていない根本原理であることは、誰もが認めるところだろう。

 興味深いのは、第2章の「東京型銭湯」である。東京を焦土と化した関東大震災の後、新しい銭湯が登場した。豪奢(ごうしゃ)な宮造りの銭湯が次々に建てられ、憩いのためのメッカの様相を呈したのだ。見どころの一つは、東京型銭湯の特徴を表す「子宝湯」の復元建造物だ。東京型銭湯では絵や写真に加えて、経営者の思いやこだわりもパネルなどによって展示されている。

子宝湯(復元建造物)。堂々たる外観が昭和の銭湯の証しでもあった

 第3章は「銭湯黄金時代」と銘打たれた。終戦後、急速な経済復興と高度経済成長と歩調を合わせるように銭湯の数は増えていく。ピークは昭和40年代だった。最盛期を迎えた当時の姿を、漫画や音楽などで振り返る。銭湯から広まったケロヨン桶(おけ)などの商品が郷愁を誘う。

 第4章「平成の銭湯」では、数こそ減ったが、決してなくならないであろう、いや、なくなってほしくない銭湯の意義が提示されている。設備やサービスは時代に合わせて変わっていくが、その存在意義は変わらない。なぜなら、そこを利用するのは、昔と同じ心を持った人間そのものだからだ。

露天風呂のある銭湯(堀田湯)にしか出せない風情がある

 「館(やかた)」は本来、貴族、武士の公邸を表す言葉だった。同時に「人の集まる場所」という意味もある。そう考えると、銭湯はある意味現代の「館」なのかもしれない。重厚な外観、人が集い裸の付き合いの中で人生を豊かにしていく。そんな東京の銭湯の歴史をひもときながら、社会の中での役割、そして変容、魅力にまで迫る今回の展示は、懐かしさに出合えるだけでも一見の価値は十分にある。しかし、この特別展のもっとも大きな意義は、我々にぬくもりと希望をもたらし続けてきた、また現在もそうであり続ける銭湯の真の魅力を再発見できることにありそうだ。

ケロリン桶(個人蔵)「ケロリン®️」は
内外薬品株式会社の登録商標。内外薬
品は富士めぐみ製薬に事業移管した 

 特別展は9月27日まで(10月24日より展覧会の会期を延長し、一部展示構成や資料を変更して再開予定)。午前9時30分〜午後5時30分。月曜日は休園。入園料は江戸東京たてもの園の入園料で観覧可。大人400円、大学生(専修、各種学校)320円、高校生・中学生(都外)200円、都内在学または在住の中学生、小学生・未就学児童は無料。問い合わせは同園(042・388・3300)
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、復元建造物内部の見学を一部休止しております。来場の際はWEBサイト(https://www.tatemonoen.jp/)にて最新情報を確認してください。

【レトロイズム編集部】

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