江ノ電をBGMに古民家で良質なアンティークを

R-OLD FURNITURE(神奈川・鎌倉)

retroism〜article52〜

 時代を経た民家と商品から、店主のセンスがにじみ出る。「シンプルなものを集めました」と言うのは「R-OLD FURNITURE」の吉川淳也さんだ。

焼き物は、大きな壺から小さな茶わんまで豊富なのが楽しい

 吉川さんが、古いものに心を奪われたのは25年ほど前。東京・町田の骨董市で見つけた江戸時代に作られたと思われるボロボロのタンスとの出合いからである。「衝撃でした。カルチャーショックといってもいい。囲炉裏(いろり)でいぶされて、言葉では表現できない美しさがあったんです。こんな世界があるのかと思いました。そのタンスは買ったか買わなかったか忘れましたが、感動はくっきりと僕の心に刻まれました」

昭和に作られたガラス瓶の特徴は、肉厚であること。色もきれいだ

 意識はしていなかったが、自分が元々、古い木製のモノが好きだったことに気付かされた。吉川さんは骨董の世界へと導かれていく。何をするべきなのか、何がしたいのか模索していた若い吉川さんは、一瞬の感動から古いモノの魅力に取りつかれ、自らの仕事にしようと決心した。「骨董屋にバイトで入って1年ぐらい。そのあと、神社などで開かれる骨董市に店を出す生活がさらに1年続きました」。そろそろ自分の店を持ちたいと考え、物件を探していた時、江ノ電の線路のすぐ脇にある今の建物に出合った。「小学校の頃から、稲村ガ崎に住んでいましたが、この建物のことは全く知りませんでした。それも不思議なことですよね」。

漆塗りの器も、吉川さんが好んで売る品物の1ジャンル。美しい

 苦笑いをした吉川さんが続ける。「時代を経た建物の中で、時代を経たモノを商う。ある種の理想を見た思いがしました」。建物自体、存在しているのが不思議なくらいだ。いろいろと話を聞くと、建てられたのは、幕末期ぐらいだという。ごく普通の庶民が住んでいた民家は、関東大震災をはじめ、自然災害にたくましくも耐え抜いて、今に残っている奇跡の家である。

店主の吉川さんが、縁側の前に置かれた縁台でゆっくりと穏やかに話す

 R−OLD FURNITUREが扱う骨董は時代もジャンルも幅広い。室町時代から戦後ぐらいまでの古い焼き物、ガラス製品、家具、掛け軸、絵画、漆工芸品など、吉川さんがクールと感じる商品がセレクトしてある。「古いものには、過去の人たちが使っていたことで生まれる『丸み』があります。焼き物もそうですけど、少しずつですけど丸くなっている。石が時間をかけて転がり、丸くなっていくようにね」。吉川さんの言葉を遮るように、江ノ電が、ガタンゴトンという音とともに通り過ぎていった。「人が作ろうとして作ったものには作為的な感じが付きまといます。でも、時間を経て丸くなったものには、それがありません。人の力では絶対に作れない何かが、タンスにしろ、焼き物にしろ加わるんです。そこが骨董品の最大の魅力だと思います」。使った人の思いがしっかりとしみ込んでいて、醸し出されることは言うまでもない。

ロッキングチェアに揺られて時間を過ごすのも悪くない。思わず欲しくなる一品だ

 吉川さんは、「古物を扱う仕事は奥が深い」と言う。「一つひとつの品物に出合うたびに、新しいことを教えられるのが、この仕事の面白さです。古いのに、いや古いものだからこそ、いくらでも新しい発見があるんです。何が出てくるかわからない。歴史も含めて、掘れば掘るだけ驚きがあります。魅力的な世界ですよ」と吉川さんはほほえんだ。「当店のコンセプトは、まず捨てられてしまうものを救出すること。エコにもなると考えているからです。だから、身の周りを見渡して要らないと思った道具などを、捨てる前に、ぜひここに売りにきていただきたい。そして、別のお客様に買っていただいて、自分なりのセンスで格好良く、クールに使ってほしいのです」

江ノ電の線路のすぐ脇に店がある。家具を買いに行ったら、電車の走る音を聞きながら、ゆっくりと商品を選びたい

 時代を経たものを、部屋に置くのは意外と難しい。しかし、と吉川さんが言う。「今の人たちは、けっこう上手に古いものを現代の暮らしの中に取りいれていらっしゃると思いますよ。現代的な部屋でも、ポイント的に古いものを置くと、意外と合うものです」

正確にはわからないが、江戸時代末期に建てられたと思われる民家で、商いを行う。外の木製のベンチも売り物だ

 いい例のひとつは、吉川さんが個人的に好きだと言う、昭和に作られたスツール(背もたれのない椅子)だ。「少しずつ形の違うスツールを取りそろえています。どれも、なんとも可愛いでしょう?」

 まず自分の部屋に、古いスツールをひとつ置いてみてはいかがだろうか? 部屋の感じは、驚くほど素敵に変わるはずである。

あーる おーるど ふぁーにちゃー
神奈川県鎌倉市稲村ガ崎3-7-14
📞0467-23-6172
営業時間:正午〜午後6時
定休日:月曜、火曜
文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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