ドヤ街にたたずむ昔風のニュータイプ居酒屋

 店内はシンプルで、気取ったところがまるでない。若い客が入りやすい雰囲気が店中にあふれている。値段も抑え気味だ。山谷酒のボトルがキープできるが、そこにも酒井さんは発見があったとほほえむ。「今の若い人は、ボトルキープなんてしたことがないんですよ。キープのシステム自体も今ではかなり少なくなってきている。だから私は、来た若い人に言うんです。うちでボトルキープしてみなよって。せっかくだから、山谷の街を歩いてみなよってね」。一気にそうまくしたてた酒井さんは、目を輝かせてこう言った。「若い人が山谷を歩いてみたり、ボトルキープを体験したり。それとともに店があることがうれしいんですよ。やってよかったなと思っています」

短冊メニューが壁にびっしりが、昔ながらの居酒屋風。すべて手書きだ

 前述の「山谷酒」を作ったのは酒井さん本人である。「うちのメインは自家製酒です。ここを始めた時、普通の居酒屋じゃつまらないと思ったので、他にないものと考えて作った酒です」。甲類焼酎に、ハッカクやシナモンなど10種類のスパイスを漬け込んだ酒。漬け込むハーブの種類や割合は、酒井さんが独自に考えたオリジナルだ。飲んでみると、どこかで味わったような懐かしい感じもする。「お客さんは、飲みやすい電気ブランとか、薄い養命酒なんて言い方をしてますね」と酒井さんは笑った。

山谷酒を作れるキットも売られている。これに焼酎を注ぐだけ。「2つ3つ買っていかれる方もいますよ」と酒井さん

 合わせるつまみは、その山谷酒に合うものを中心に、あらゆるジャンルの食べ物が用意されている。「この酒には中華がわりと会うので、中華料理系が最初は多かった。ところがだんだん増えていっちゃって、節操のないメニューのラインアップになっています」と自虐的に言うが、このメニューは見ていて楽しい。

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