絶品の蕎麦と昭和な絶景に舌鼓を打つ

そば会席 立会川 吉田家(東京・立会川)

retroism~article43~

 職人魂を持った職人がいる。立会川に店をかまえる「そば会席 立会川 吉田家」の店主、池田耕治さんだ。「金をもうけるのが職人じゃない。いい仕事をするのが職人なんですよ」

もり900円。生粉打ちの蕎麦は風味がダイレクトに味わえる。わさびも当然のように本わさびをすりおろしたものが添えられている

 一番良い材料を使わないとうまい蕎麦はできない。だから、いい素材を手に入れるためには、金を惜しまない。「おいしい蕎麦を出したい。そのためには原価かかってもいいんだよ」。さらに池田さんの職人論は続く。「どこから見てもらっても、恥ずかしくない仕事をするのが職人だよ。そういう気持ちを持ち続けたいし、日本人なら持ち続けてほしいよね。私のじいさんも常に言っていたけど、心持ちを大事にしろと。お前の体はお客さんのものだよって。そういう心意気みたいなものがほしいよな」

奥の座敷に陳列された、大正から昭和初期にかけて使われていた道具。木製のメニューが時代を感じさせる。手前に見えるのが、今はあまり使われなくなった長い麺棒

 吉田家の蕎麦は、そんな池田さんの心持ちの結晶だ。うまいせいろ一枚、蕎麦一杯のために、職人にしかなし得ない最大限の力が注がれている。まず蕎麦だが、群馬産の玄蕎麦を抜き(現蕎麦の皮をむいたもの)で少量ずつ仕入れ、自前の石臼で挽(ひ)く。打つのは朝と昼間の2回。「挽きたて、打ちたて」を実践するためだ。つなぎを使わずそば粉100%の生粉打ちを供する。蕎麦をゆでる時間はわずか15秒だ。「ゆでる時間は短い方がいい。長くお湯の中に入れておけば、風味をお湯の中に捨ててしまうことになるから」

小さいながら手入れが行き届いた庭。風流だ

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