ジャケの絵柄で分類の尋常でないサントラ専門店

 宮越さんは一呼吸入れた後、思い出したようにまた話し始めた。「20歳ぐらいの女性が来て、一生懸命ジャズのところでレコードを探していました。あまり若い女性が1人で来る店ではないので、ちょっとびっくりして話しかけてみました。私は彼女に、CDは聴かないんですかって聞いたら、聴かないって言うんです。『私はレコードしか聴きません』って。これって、象徴的な出来事だと思いましたね」。古いものの良い部分が確実に見直されている。宮越さんはそれをしっかりと感じたと言うのだ。「だとすれば、その良い時に戻してやる必要があると私は思うんです。私の店は、そのための発信源だって自負があります」

インデックスプレートは「FOOD/DRIK」「CAR/MOTO RBIKE」などジャケットの絵柄によって分類されている

 さらに、サウンドトラックを主に扱っている店の主人として、宮越さんは映画の衰退をも憂う。「今、映画は廃れています。まずテレビで以前ほど流れないじゃないですか。淀川長治も水野晴郎も亡くなった。映画を語れる人、語り継げる人がいない。映画館に足を運んで古い映画を観ることも少なくなってる。DVD借りて観ればいいって言うけど、映画なんて一人で見ても面白くありませんよ。大きなスクリーンで隣同士座って観て、帰りに酒でも飲みながら、今観てきた映画の話をしたり、それこそが楽しいはずです。全然共有できてないんです。私は、そこに問題提起をしたいんです」。ここは、それができる土地柄だ、と宮越さんは考える。なぜなら歴史的に音楽や映画を受け入れる土壌があるからだ。近くには、ゴジラの作曲者・伊福部昭さんが教壇に立った東京音楽大学がある。裏の雑司が谷には手塚治虫がトキワ荘から引っ越してきたアパートもあった。「音楽と映画、マンガなどの芸術の原点みたいな土地でもあるんです」

普段は閉まっているので来店するなら電話で予約が必要なアブノーマルな店だ

 最後に宮越さんは夢があると言った。「昭和に流れていた古いけど良い音楽や映画を、この先も『価値のあるモノ』にすることです」

えーあーるしー さうんどとっらっく 
東京都豊島区雑司が谷3-10-2 ワコード目白1F
📞03-3986-8819
営業時間・定休日:未定、不定休(来店は電話で予約が必要)
https://sound-track.net/

文・今村博幸 撮影・柳田隆司