昭和の古家具が忠実に再生されて現代に降臨

 米倉さんが、鎌倉でそうすけを開店したのは、2002(平成14)年、友人から売ってもらったインテリアで使える家具や道具を売ることから始まった。当初はいわゆるセコハン(セカンドハンド)全般を扱っていて、古着なども売っていた。しかし次第に商品の種類が、土地柄を反映したものへと変わっていったという。「鎌倉で商売をしていると、自然と古いものの買い取り依頼が多くなります。それで縁がつながっていって、古家具が多くなっていきました。買い取った家具を手入れしながら、独学で直して売るようになって、今は、古家具や古道具が得意な店になっています」

模様入りのガラスが美しい食器棚。ワイングラスやタンブラーなどを入れればしっくりくる

 現在、そうすけに並ぶのは、生活で使う家具、本棚、食器棚、ガラス戸棚など。それら古家具の面白さを米倉さんは、「中途半端さ」と笑う。「古い家具はもともとアンティークとかヴィンテージとか呼ばれていました。でも僕らが扱っているのは100年も経ってない。ヴィンテージなんて言葉は、ぜんぜんしっくりこないんですよね。つまり、昭和の初めとか中ごろの家具に対して、いい言葉がなかったんです。同時にそれは、昭和の家具があまり注目されていなかったことも意味します。でも実際に扱ってみると、意外とファンがいてくれたので、これは面白いと思いました」

デスクサイドやキッチンでも使えるワゴン。左にあるのは、凝った作りの灰皿。足部分には、真鍮(しんちゅう)製の装飾が施されている

 古家具の魅力は、直しているとよくわかると米倉さんはうなずく。「きちんと木を組んで作ってあって、今の家具よりも確実に手間がかかっています。しかも、きちんと直せる。手間をかければ、部屋に置いてすぐに使える道具に戻っていきますよ」

 買い取った家具の手の入れ方は入念だ。仕入れてきたものを一度水洗いして汚れを落とす。乾燥に丸一日をかけ、不具合をチェックし壊れているところは直していく。ガラスは外せれば外して洗い、割れていたら交換。仕上げに塗装をするが、そこも念が入っている。「なるだけ、元の色に近い色で塗装します。可能な限りオリジナルの状態に戻したい。古いものを残したいと思うからです。一番気を使うところですし、やりがいもあるところです」。リメイクするのではなく、あえて元に戻すところがポイントだ。

夏は着なくなったコートなどのかさばる衣類もしまえそうな箪笥と品のいい飾りがついたチェア

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