昭和の古家具が忠実に再生されて現代に降臨

古家具古道具 そうすけ寒川店(神奈川・寒川)

retroism〜article35〜

 昭和の暮らしぶりが垣間見える、庶民に密着した箪笥(たんす)や食器棚などを、最近は古家具(ふるかぐ)と呼ぶ。作られた時代は戦前戦後(昭和20〜30年代)が中心だ。そんな懐かしいインテリアを直して売るのが、「古家具古道具 そうすけ」(以下そうすけ)である。

右はガラス付きの食器棚、その左隣は中が見えない食器棚。大きさにもよるが茶箪笥などは3万〜6万円台ぐらいがメイン

 例えば、昭和には、本革よりも安価で手に入れられる合皮を使ったソファが流行した。明治以来日本に入ってきた洋風の暮らしが庶民にも降りてきたのだ。購入した人たちは、欧米風のモダンなライフスタイルを手に入れた気分になった。また、無垢(むく)の木の表面に薄い木の皮をはった合板や化粧板を使ったものも登場した。店主の米倉徹さんが、穏やかな表情で話す。「50年ぐらい前だと思いますがハリボテが出てきました。無垢の木に突き板が貼られていたり、デコラといった化粧合板が使われた時代の家具です。デザイン的に使ったのか、材料がなかったのか分かりませんが、少なくとも、当時の家具の特徴になっています」。他にも、跳ね上げ式の扉がついているげた箱は、履き物を入れる間口が低く、ぞうり用だったことがうかがえる。少なくとも、スニーカーは入りそうにない。「街の家具屋さんがわりとあって、ほとんど聞いたことのない家具店のプレートが枠に貼ってあるものなんかもありますよ」

金具が時代を物語る背の低い箪笥。小物入れやちょっとした道具入れに使えそうだ

 米倉さんが、鎌倉でそうすけを開店したのは、2002年、友人から売ってもらったインテリアで使える家具や道具を売ることから始まった。当初はいわゆるセコハン(セカンドハンド)全般を扱っていて、古着なども売っていた。しかし次第に商品の種類が、土地柄を反映したものへと変わっていったという。「鎌倉で商売をしていると、自然と古いものの買い取り依頼が多くなります。それで縁がつながっていって、古家具が多くなっていきました。買い取った家具を手入れしながら、独学で直して売るようになって、今は、古家具や古道具が得意な店になっています」

模様入りのガラスが美しい食器棚。ワイングラスやタンブラーなどを入れればしっくりくる

 現在、そうすけに並ぶのは、生活で使う家具、本棚、食器棚、ガラス戸棚など。それら古家具の面白さを米倉さんは、「中途半端さ」と笑う。「古い家具はもともとアンティークとかヴィンテージとか呼ばれていました。でも僕らが扱っているのは100年も経ってない。ヴィンテージなんて言葉は、ぜんぜんしっくりこないんですよね。つまり、昭和の初めとか中ごろの家具に対して、いい言葉がなかったんです。同時にそれは、昭和の家具があまり注目されていなかったことも意味します。でも実際に扱ってみると、意外とファンがいてくれたので、これは面白いと思いました」

デスクサイドやキッチンでも使えるワゴン。左にあるのは、凝った作りの灰皿。足部分には、真鍮(しんちゅう)製の装飾が施されている

 古家具の魅力は、直しているとよくわかると米倉さんはうなずく。「きちんと木を組んで作ってあって、今の家具よりも確実に手間がかかっています。しかも、きちんと直せる。手間をかければ、部屋に置いてすぐに使える道具に戻っていきますよ」

 買い取った家具の手の入れ方は入念だ。仕入れてきたものを一度水洗いして汚れを落とす。乾燥に丸一日をかけ、不具合をチェックし壊れているところは直していく。ガラスは外せれば外して洗い、割れていたら交換。仕上げに塗装をするが、そこも念が入っている。「なるだけ、元の色に近い色で塗装します。可能な限りオリジナルの状態に戻したい。古いものを残したいと思うからです。一番気を使うところですし、やりがいもあるところです」。リメイクするのではなく、あえて元に戻すところがポイントだ。

夏は着なくなったコートなどのかさばる衣類もしまえそうな箪笥と品のいい飾りがついたチェア

 そこには米倉さんの古いものに対する愛情がある。「作った人がいて、それをいいと思って買った人がいます。私たちの手元に来るまでに、最低2人の人の思いがあります。家具ならば、それを使っていた人がプラスアルファでいる。彼らの思いを踏みにじらないためにも、元の形に限りなく近づけたいのです」

作った人や使った人の思いがたっぷりとしみ込んでいるからこそ、なるだけ元の形に戻したい、という気持ちで作業する

 家具は、基本的には短期間で手放すものではない。少なくとも数年、長ければ10年単位で誰かが使っていたものだ。当然、愛着がなかろうはずはない。「作る人も一生懸命ですし、私たちもそれに答える義務がある。少なくとも、店に並べているものは、自信を持ってお出ししているつもりですよ」

 この仕事には楽しさもあると米倉さんはほほえむ。「買い取った時には、だいたい汚れていますが、手を入れることで奇麗になっていく。その作業は、素直に楽しいところです」

「ここにきていただけるお客様は、買い物の上級者だと思いますよ。さまざまなものを見てきた人がたどり着く店だと自負してます」と米倉さん

 商うのは、家具という名の道具だとしても、それを使っていた人たちの思いは必ずしみ込んでいる。「買い取りを依頼するお客様も、いろんなパターンがあります。そんな値段じゃ売れないとか言われることもあります。そういう意味では人間のいいところも悪いところも見えますよね。使ってた人が亡くなって、それを処分する子供たちの表情はやはり寂しそうです。僕が買い取るのは、その人たちの思いも含めていると思っています。ただ、注意しなくちゃいけないのは、それらを気にしすぎると、値段の判断を間違うところです。仕事ってそういうものですよね」

店は寒川と鎌倉にある。鎌倉店は2002年オープン。今回取材したのは4年前にオープンした工房を併設する寒川店

 古家具は、量的に年々減ってきていると米倉さんはうつむく。「鎌倉でも古い家がどんどんなくなっていますから、18年前とは違ういます。だけど、もしかしたら、僕らが直した家具を誰かが買って、また壊れたら直して使える。使ってくれたらそれは楽しいことですよね」

 使う人のライフスタイルを鮮明に映し出すのが家具だ。どんな暮らしをしたいのか、どう生きたいのかまでも見えてしまうことさえある。だからこそ家具選びは楽しいし、こだわる価値がある。その選択肢の中に、古家具を取り入れてみるのもアリだと思う。

ふるかぐ ふるどうぐ そうすけ
(鎌倉店)
神奈川県鎌倉市由比ガ浜3-1-2
📞0467-22-8781
営業時間:午前11時〜午後6時
定休日:月

(寒川店)
神奈川県高座郡寒川町岡田4-6-32
📞0467-95-9812
営業時間:午前10時〜午後4時
定休日:月
http://www.so-suke.com/

文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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