オーディオマニア垂涎のレアなアイテムがズラリ

ホール トーン シティ ヨコハマ(横浜・東神奈川)

retroism〜article32〜

 アルニコ。この甘美な響きにオーディオファンは熱狂する。オールドファンならなおさら、この言葉を聞いただけで、思わず立ち止まり振り向くはずだ。

あらゆるスピーカーが試聴可能な店内には、シアターキングシリーズがズラリと並ぶ。好みの一台をじっくりと吟味したい

 1970年代の終わりまで、スピーカーに使われていたアルニコ磁石。アルミニウム、ニッケル、コバルトを原料とする磁力の強いこの磁石が、スピーカーの音を左右し、頂点まで押し上げると言い切るのが、「ホール トーン シティ ヨコハマ」の鈴木真奈美さんである。

「私たちが言うヴィンテージは、かつて、マランツやジェンセン、アルテックなどが自社で作っていた製品を指します。今は、名前だけが残っているメーカーもありますが、それらは古くても、ヴィンテージとは呼びません」。そしてスピーカーのヴィンテージが、アルニコであると、鈴木さんは断言する。

20cm口径のローサーPM-6Aを搭載したスピーカーシステム。全ての音域をクリアに再現
「アルニコでスピーカーユニットを作ってるのは今世界で唯一ローサー社だけです。1935年から設計図を書き始めて、発売されたのが50(昭和25)年。それから同じものを作り続けています」。人間の声なら、目の前で歌っているかのごとく、バイオリンの音は、馬の尾で作られた弓毛が弦の上をなでている、そのものズバリの音が出るのである。「スタジオのドアを開け、中に入って聞こえるのと同じ感覚が味わえるのが、アルニコなんです」。そのアルニコの音を100%引き出すキャビネット(筐体=きょうたい)がある。「シアターキング」と名付けられたスピーカー群がそれだ。「オーディオの良し悪しは、スピーカーが90%、あと5%はアンプ、あと5%はソフトです」。スピーカーが作られ始めたのが20年代、それから100年を経た今、理想のキャビネットが完成したのである。

1945年に発売されたマランツ社のプリアンプ1号機。日本に入った台数がわずか10〜20セットの貴重品だ

 特徴は、リアロードホーンキャビネットと呼ばれる仕組みにある。簡単に言えば、スピーカーの後方に出てしまう音を巧みな構造で前方に出す。これによって、音源から放たれた音がすべて前へ出てくる。極めて密度の高い音が鳴るのである。また、曲線で作られた形状がユニークだ。原理は、楽器が曲線でできているという当たり前だが、普遍的な事実から始まる。

「だからスピーカーからの音も曲線に沿って出てこなくてはならない。楽器の音を再生するためには、四角い箱で鳴らしていると不協和音が発生してしまいます。この形は、この先ずっと残っていくと私は考えています。楽器本来の音を家で再生するためにはこの構造が必要です。そしてスピーカーユニットはもちろんアルニコです」

193040年ごろ、アメリカの公民館や映画館の天井につり下げて使われていたスピーカー 
 まさに、何百年も前に完成された楽器の形から、新しいスピーカーが生み出された。昔のアルテックやタンノイのアルニコをこの箱に入れると、必ず同じ音を奏でる。 

 いい音を知り尽くした鈴木さんが、CD再生の秘けつを教えてくれた。「ブルーレイプレーヤーで再生してください。理由は、半導体の発達に原因があって、今のCDプレーヤーは、半導体の開発が止まってしまっています。ところが、ブルーレイの半導体はどんどん良くなっている。プレーヤーは高価でなくて構いませんよ」

マッキントッシュMC275。ヴィンテージオーディオパワーアンプの神髄を堪能できる名機

 鈴木さんは、自信ありげに笑い、改めてこのスピーカーの魅力を強調する。「家で、生に近い音が聴けるのがこのスピーカーです。声もクリア。奥行きがあって立体感があることが、実際に聴いていただけばお分かりになると思います」

1940年代製のアンティークなラジオ2台
 ホール トーン シティには、極めて貴重な機器がずらりと並んでいる。例えば、45(同20)年に発売されたマランツのプリ・メインアンプの1号機、アルテックのアンプの1号機など、マニアなら垂涎(すいぜん)のアイテムのオンパレードだ。さらに、ブレンダ・リーやローズマリー・クルーニーら、往年の名シンガーが使ったマイクロホンも売られていた。

まだドランジスタが発明されいなかった1970年以前のアン
プは往年の名機ばかり。当然のように真空管が使われている

  鈴木さんが薦めるスピーカーは、物理的、数学的に理にかなっている。古き技術を現代によみがえらせた、人間の英知の結晶と言っていいだろう。

ほーる・とーん・してぃ よこはま
横浜市神奈川区広台太田町11-3 ナイスアーバン弐番館101
📞045・323・2966
営業時間:正午〜午後7時
定休日:水、木
文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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