珠玉のヴィンテージカーに出会える専門店

 「自分の所有するこの車は、自分以外は操れないという優越感があったんだ。そこいらの、わからんちんあたりには、乗りこなせないだろうと。コイツは、俺だけの車だって言う、所有欲を満たす車でもあったんですよ」。「でもね」と芳野さんは苦笑いを浮かべる。「こういうヴィンテージものは、女性からは嫌われるんです。隣に乗れって言っても、『(排ガスが)臭い、(エンジン音が)うるさい』って、だいたい言われるよ」。しかも、暖房はあるが冷房はついていない。夏は厳しいと、芳野さんは口を曲げた。

当時のトヨタ車にしては、流線型がきれいだと芳野さんが評するセリカリフトバック。「ムスタングが流行ったけど、これは和製ムスタングだね」

 「暑い時には、気合を入れてドアを開けないと、車内に入れないよ。特にここ数年の夏の暑さはひどいからね。あとオーバーヒートも気をつけないとならないんだ」。厄介な車だが、離れられないと芳野さんは笑う。「手放せない魅力が2000GTにあるのは紛れもない事実です。一種の中毒だね。男目線で言えば、女性の宝石と一緒なのかな。なんでそんな石ころが何百万円もするんだってなるでしょう? 全く同じで、そんな古い車がなんで、1000万円以上するの?ってことですよ」

店の外観の一番目立つ場所に、2000GTの姿が誇らしげに描かれている

 ショールームから少し離れたヤードには、2000GTをはじめ、セリカリフトバックやハコスカ(3代目スカイライン)など、車好きが身を震わせて喜ぶ往年の名車が眠っている。それらはまるで、現代の道路を疾走する時を、今か今かと待っている野獣のようにも見えた。

びんてーじ・かー・よしの
横浜市神奈川区片倉1-2-2
📞045・491・7911
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:なし
http://www.vintage-yoshino.com/
文・今村博幸 撮影・柳田隆司