国民車「てんとう虫」と共に40年

 「まず作りがしっかりしています。製造したスタッフは航空機の生産で培った確かな腕を持つ技術者であり、エンジニアも思い入れたっぷりです。当時の技術の粋(すい)を集めた軽自動車といえます」。少年のように目を輝かせて加藤さんが続ける。「空冷のツーサイクルのエンジンは、部品点数も少なく壊れにくい。他のメーカーだと、キャブレーターにオーリングとかゴムパッキンとかいろいろ入っていますが、この車にはほとんどと言っていいほど使われていません。劣化する箇所が少ないんです」。機構がシンプルだから壊れにくい。また壊れても工夫して直せる。腕のいいメカニックにかかれば、あっという間に直ってしまう車なのだ。

額に入っているのは、昭和30年代のスバ
  ル360の写真が表紙になったカレンダー   

 昭和30年代から40年代にかけて作られた車に共通する特徴をスバル360も持ち合わせていると加藤さんはうなづく。「旧車の良さは、基本的に作る人の心構えが違うところだと思うんです。この車は、その最たるモノのひとつと言えます」。クラシカルで、丸みを持った可愛らしい車体だが、そこにも憎らしいほど緻密な計算がなされている、と加藤さんは言う。「丸みで強度を出しているんです。曲線を使うことによって、外からの衝撃にも強いから、使う鉄板も薄くてすむ。これが軽量化へとつながります。約400キロ弱の重さは、お相撲さん2人分ぐらいしかない。1人でも押せるぐらいですよ。さらにその軽さが走りにも影響します。私も、かなりの数のスバルを見てきましたが、手がければ手がけるほど良さを感じさせてくれます。本当によくできた車ですよ」

鉄製のサイドブレーキの根元には、チョーク、ヒーター、ガソリンコックのレバーが並ぶ
 実際に乗ると、いまだに結構いい走りをするのだという。「走りに軽快感があるツーサイクルの車は個人的に好きですね。軽快に走る感じがいいんですよ」。加えて、コレクター心をくすぐる要素も持ち合わせていると加藤さんは饒舌(じょうぜつ)だ。「スバル360は、製造が終わるまで、細かいところが年々変わっている。その変化もマニアには、たまらない魅力なんです、年代ごとに集める方もいるほどです」。車をいじるのが好きなマニアにも高い人気を誇る。「ちょっと器用な人だと、エンジンも含めて、自分でもかなりいじれる。整備性がものすごくいいんです」。もちろん、整備できない人でも、魅力にとりつかれる人は決して少なくないのだ。「愛嬌のある見た目が気に入って買って、良さに目覚めていくパターンも多いと思いますよ」

構造をグラフィックアートで描写したポスターは、KATO MOTERSのオリジナル 

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