落語界のレジェンドが愛した純喫茶

 そんな場所ならば、悲喜こもごもがあるのだろうと思いきや、答えはノーだった。楽屋には、涙や憎しみは存在しない、と敬子さんは言う。あるのは笑いだけなのだ。「昔も今も、けんかなんか誰もしません。だって、席亭である大旦那さんの孫がやってる店ですよ。そんなことしたら一発で出入り禁止です。また、芸人さんも噺家さんも泣いてる暇なんてありません。あるのは笑いだけ。ただ、一度だけ、(古今亭)志ん朝師匠が亡くなった時に、(林家)こん平師匠と木久扇師匠かな、大酒飲んで泣いてたことがあります。で、酔っ払ったこん平さんが何度もお金を払おうとしたってのがありました。もらっちゃおうかなってちょっと思いましたけどね」

メニューには、そばやいそべもちなどの変わったメニューも。特にそばとうどんは本格派でファンも多い 

 末廣亭がいつも笑いが絶えない場所であるとするなら、喫茶楽屋は、昭和の落語界で名を馳せた噺家たちが心と体を休める場所だった。と同時に、落語や漫才の知られざるもうひとつの舞台なのだ。

きっさがくや
東京都新宿区新宿3-6-4 2F
📞03・3351・4924
営業時間:午前10時~午後8時
定休日:月2回不定休
文・今村博幸 撮影・柳田隆司

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