あの頃が蘇る 昭和歌謡の宝石箱

 レコードからCDに変わる時、半ば強制的に移行させられた感がある。ノイズが出るとか大きくてかさばるとか、シングル盤に至っては、1曲終わったらひっくり返すなり、他の盤に入れ替えなくてはならないなどデメリットが挙げられ、リスナーもそれに同調した。しかし、そんなデメリットや手間がかえって面白い、と捉える若い人たちが再び現れた。「太古の昔に滅びた恐竜が、蘇ったという感覚を覚えましたね」と、杉本さんが苦笑する。

   レコード全盛だった頃の音源は、手間のかけ方が桁違いだ。フルオーケストラで、著名なミュージシャンを使い、何テイクも録り直してやっと一つの曲が完成する。何人もの人の感性とテクニック、クリエイティビティーによって磨かれた音源が一枚のレコードとしてプレスされ世に送り出されていたのだ。その魅力を再発見し、さらに加速してきたのが、ここ5年間だと杉本さんは回想する。

お目当のアーティストのコーナーから、サクサクと一枚ずつ持ち上げ、好みの一枚を探す作業は、中古レコード店の最大の醍醐味だ

  一方で、簡単に手に入るモノには愛着が湧きづらいが、レコードはその逆の最たるものの一つだ。「実体のある何かを所有する喜びは誰にでもあります。そこが人よりも強い人をマニアなどと呼びます。我々の店は、そんなマニアの方と付き合ってきました。でもその欲求は、人間に根源的に内在する業のようなものでもあると思うんです。所有する喜びは決して滅びない。そんなレコードの未来を、僕たちは見届けたいと思っています」

    顔をほころばせた杉本さんが、象徴的な出来事を話してくれた。「中学生ぐらいの女の子が、少年隊のレコードを探しに来ました。プレーヤー持ってるんですかって聞いたら、『まだです。今度誕生日に買う』って。『でもこのレコードにはシールもついてるし、レコード自体にも絵がついている、いわゆるピクチャーレコードだから、グッズとして欲しいんです』って言うんです」

流行の最先端が集まる新宿の繁華街に、昭和へと誘う口がぱっくりと開いている。それはあたかも、タイムマシンの入り口のようだ

 デジタル化され多音源をダウンロードして聞く時代。それでもなお、いやだからこそ、人々はレコードの温もりに魅せられてやまない。

でぃすくゆにおん しょうわかようかん
東京都新宿区新宿3-31-4山田ビル2F
📞03・6380・6861
営業時間:正午~午後8時(日祝午前11時~
定休日:無休 https://diskunion.net/shop/ct/showa_kayou

文・今村博幸 撮影・柳田隆司

 

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