懐かしの玉電に合える唯一無二の私設資料館

玉電と郷土の歴史館(東京・二子玉川)

retroism〜article10〜

 「おっ、写真撮るの? だったら帽子かぶらなきゃ」そう言って、マニアなら垂涎(すいぜん)であろう帽子を頭にポンと乗せる。東急電鉄がかつて使用していたモノだ。そして間髪を入れることなく、「玉電と郷土の歴史館」館長・大塚勝利さんのマシンガントークがさく裂した。「俺は、なんに対しても好奇心があるの。モノがない時代に育ったからかなぁ。幼い頃は、買えないものがたくさんあった。大人になって小遣いで買ったり、もらったりしてモノが増えていったんだ。なおかつ捨てることが嫌い。だからますますたまっちゃったんだね」

入り口を入ってすぐ右手に玉電の運転台があるが、位置は蕎麦屋の時から変わらない。つまり、蕎麦を食べる客をまず迎えたのはこの運転台だった  

 今、この歴史館には、2000種類のありとあらゆるものが展示・収蔵されている。玉電の運転台をはじめつり革や切符ホルダーなど電車関係、蓄音機、レコード、プラスチック・陶器・ブリキなどでできた赤いポスト、崎陽軒のしょうゆ入れひょうちゃん」、ビール瓶、レコード針……。とにかくあらゆるものを所有しているのだ。歴史館に展示してあるものは、全体の5〜6%ほど。あとは、まだ倉庫にしまってあると大塚さんは得意気だ。「男ってさ、なんだかんだ集めるじゃん。男のロマンだって思ってたのよ。家族からは、ごみみたいの集めて何やってんのって言われながらね。ところが、歴史館を開いたとたんに新聞社とかテレビ局から取材を受けるようになってさ。家の中での地位が上がったな、と自分で思ったね。まあ、自分で言ってりゃ世話ねーか。ははは」。会った時から輝いていた大塚さんの目がさらに輝いた。

切符売り場で使われていたものを切符付きで譲り受け、展示している。大塚さんの熱意にぼだされた人によって贈呈されたものだ

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